ランドマップ研究室もようやく検索エンジンで検索できるようになってきました。
しかし、そういう目先のことばかりではなく、内容を充実させていかなくてはなりません。今、糖尿病の診療を学習するためのコンテンツを作成しています。
日々のアップデートはこのようなブログ形式の簡単な報告になってしまいますが、時間を掛けて出版にも堪えられる質の文章を作成していきたいと思っています。
●メトフォルミンのメカニズムを調べる
糖尿病についてはとにかく書くべきことが多いです。
ざっと挙げてみても、診断、血糖値を変化させる要因、治療目標、食事療法、運動療法、経口血糖降下剤、インスリン療法、インクレチン関連作動薬など。
このところ、それぞれについて重要な文献を交えながら考察しています。まず、やってみたいのが、経口血糖降下剤についてです。
現在読んでいる論文が、「Molecular mechanism of action of metformin: old or new insight ?」です。(Graham Rena et al. Diabetologia.2013 56.1898-1906)
邦訳は「メトフォルミンの作用における分子レベルでのメカニズムー古い、それとも、新しい見識?」となるでしょうか。
●50年以上の歴史があるメトフォルミン
日本において、メトフォルミン(商品名では以前はメルビン®、現在ではメトグルコ®)は1961(昭和36)年から使用され始めました。
既に50年以上の歴史がある古い薬です。現在一般的に処方されているメトグルコ®250mg1錠は何と9.9円です。通常、1日量3~6錠で内服するので1日30~60円、1ヶ月で900~1,800円となります。しかも、保険適用で3割負担ですから、メトグルコ®を常用量で使えば、1ヶ月270~540円という極めて安価な薬であることが分かります。
安い薬だからといっても、効果がなければ意味がありません。しかし、メトフォルミンは、国内外の糖尿病治療ガイドラインで、第一選択薬となっているくらい、有益な効果が確認されています。
●作用機序がよく分かっていないメトフォルミン
糖尿病の方に極めて有効な薬剤であるメトフォルミン。有効であることは以前から分かっていましたが、実はどうしてこのメトフォルミンが糖尿病に良いのか、そのメカニズムはよく分かっていませんでした。
先ほど紹介した「Molecular mechanism of action of metformin: old or new insight ?」は、2013年7月に発表された論文です。50年以上の歴史がある古い薬剤なのに、未だにそのメカニズムが議論になっているのです。
まだ全部は読んでいませんが、どうやらメトフォルミンは、肝臓の細胞内のミトコンドリアに作用して、エネルギー産生の効率を低下させるようです。
メトフォルミンは、ミトコンドリア内にある、ATP(アデノシン三リン酸)を生産する際に必要な電子の伝達を行うタンパク質複合体(ComplexⅠ)の機能を妨げるようなのです。
この作用は、同じ糖尿病薬であるピオグリタゾン(アクトス®)にも認めるようですから、メトフォルミン特有のものというわけではなさそうですが、ミトコンドリアの電子伝達系を阻害するというのは、驚きの事実でした。
●薬の作用を知るのに必要な生化学の知識
細胞内のエネルギー産生、ミトコンドリアの機能などを詳しく知らない方にとっては、難しい話であると思います。ここで重要なのは、メトフォルミンのような糖尿病の薬の作用を知るのに、細胞の基本的な仕組みを知っておく必要があるということです。
一般的に、これらは生化学という領域で学びます。私も含めて、多くの人にとって、生化学というのは、その言葉を聞いただけでアレルギー反応を起こしてしまうほど、勉強するのが大変な分野です。
しかし、本当の意味で薬の作用を理解するには、生化学について深い理解を得ておく必要があります。私も栄養や糖尿病の勉強をすればするほど、生化学の重要性を実感している次第です。
引き続き論文を読んでいきたいと思います。
ランドマップ研究室では、薬剤についても、分子レベルのメカニズムから臨床研究の結果、実際に私が使った感触・使用経験、私自身の価値観も含めて、様々な観点からアプローチして、総合的な理解をしていこうと考えています。
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